振動の種類
振動の単純な形は単振動で、
振幅・周波数・位相の3つの要素の合成波から成り立っています。
1.振幅
振動の大きさ
2.周波数
1秒間に何周期の振動があるのか
3.位相
振動している箇所が他の箇所に対して、どのような位置関係にあるのか
D:変位、A:振幅、ω:角周波数、θ:位相、f:周波数、t:時間
振動のパラメータ
振動を測定するにあたって、変位・速度・加速度の3つのパラメータがあります。
周波数が低いほど変位の感度が高く、周波数が高いほど加速度の感度が高くなるため、
周波数が高くなるに従い、変位・速度・加速度の順にモードを選ぶのが有効な測定法です。
なぜ周波数によって、変位と速度、加速度を使い分けるのですが?
周波数が高くなるにつれ、加速度の感度が高くなる理由は、
周波数(f[Hz])が高くなると、ω(角速度)の値が大きくなります。(ω=2πf)
変位の数式よりω(角速度)の値は、sin関数の中に入っているため、
ωが大きくなっても、変位の値は大きく変わりません。
速度や加速度の数式では、sin関数やcos関数の前にωの値があり、
速度ではω、加速度ではωの二乗として値に影響します。
そのため周波数が高くなるにつれ、速度や加速度の感度が良くなります。
このことから、当社ではベアリング診断(軸受診断)の際には加速度モード、
その他の不良を解析する際には、速度モードと加速度モードを併用して診断いたします。
低周波数領域 5Hz~1kHz程度 |
偏平軸 ミスアライメント 軸の曲がり バランス不良 据付不良 オイルウィップ スチールホワール |
2fr fr 2fr 3fr fr 2fr 3fr fr fr 1/2fr以下 1/2fr以下 |
---|---|---|
1kHz~20kHz程度 | 転がり軸受損傷 クラック |
|
高周波数領域 5kHz~20kHz程度 |
転がり軸受損傷 キャビテーション ギヤ損傷 |
fr:回転周波数
振動パラメータ | 異常の種類 |
---|---|
変位 | 変位量または動きの大きさそのものが問題となる異常 回転機械の軸振れ (ゆっくりとした動きのため、目で見て確認できる) |
速度 | 動きの大きさと、その繰り返し回数(疲労度)が問題となる異常 回転機械の振動 (目では見えないが、触れると振動していることが分かる) |
加速度 | 衝撃力などの力の大きさが問題となる異常 軸受の損傷などによる、振動歯車の損傷による振動 (手で触れても分からないが、異音として確認できる) |
下記のように、変位と速度と加速度の式は、微分・積分の関係になっています。
(変位を時間tで微分すると速度、速度を時間tで微分すると加速度)
変位Dは、英語で変位を意味する「Displacement」の頭文字
速度Vは、英語で速度を意味する「Velocity」の頭文字
加速度Aは、英語で加速度を意味する「Acceralation」の頭文字から
「A」「V」「D」と表すことが多いです。
振動を測定する場合は、基本的には
負荷側・反負荷側の「軸方向・垂直方向・水平方向」を測定します。
組立・据え付け不良によるアンバランスやガタつきなどによる「低周波振動」に
それぞれ特有の方向があるためです。
振動の方向 | 異常の種類 |
---|---|
軸方向(A) Axial |
ミスアライメント |
垂直方向(V) Vertical |
固定ボルトの緩み、取り付け不良によるガタツキ |
水平方向(H) Horizontal |
回転体、回転子の偏心アンバランス、基礎(ベース)の剛性不良 |
全方向 | 軸受の損傷 (軸受不良の場合は、3次元にて振動が伝搬するため) |
上記の方向による判定は、横置きモーターの場合に限ります。
機器または測定箇所の剛性により上記以外の要因となる場合もあります。
振動波形と高速フーリエ変換
測定された波形から、特定の周波数がどの程度の割合で含まれているかを調べることで
機械内部のどの部分に問題があるのかを推測することができます。
振動周波数解析には、高速フーリエ変換(FFT)が一般的に用いられています。
測定した振動波形を高速フーリエ変換し、その周波数成分から内部の異常箇所を推測することができます。
(周波数スペクトル推定方法)
高速フーリエ変換とは
測定した振動波形は複雑で、評価することが困難ですが、高速フーリエ変換すると
周波数が異なる単調な正弦波(sinカーブ)に分解することが可能です。
その正弦波が各周波数に対して何個含まれているかにより、評価することができます。
精密診断報告書
弊社では振動データ管理システムを使用し、精密に解析します。(解析データはお渡しします)